CAM Charges(共用部維持管理費)

CAM charges とは何か、貸主がどのように算定するか、監査時にどこを確認すべきか、そして香港・シンガポール・日本の商業賃貸借でどう現れるかを整理します。

最終更新: 2026-05-06

CAM は Common Area Maintenance の略です。商業賃貸借契約における CAM Charges とは、貸主が物件のうち入居者全体が利用する部分を運営・維持管理し、場合によっては修繕するために負担する費用のうち、借主が按分して負担する金額を指します。対象には、ロビー、エレベーター、廊下、駐車場、植栽、警備、ビル管理などが含まれます。CAM は、ベース賃料に次いで借主が支払う変動費目の中でも特に大きく、同時に年末精算で想定外の差額が生じやすい項目です。

CAM の算定方法

一般的なオフィス賃貸借契約では、まず貸主が転嫁できる費用区分で構成される CAM の「expense pool」を定義し、そのうえで借主の「pro rata share」を定めます。通常、これは借主の賃貸面積を建物全体の賃貸面積で割って算出します。貸主は毎年 CAM を見積もり、その見積額を賃料とあわせて毎月請求し、暦年終了後に実績値で精算します。実績が見積を上回れば借主が差額を支払い、見積が実績を上回れば借主にクレジットが付与されます。

特に重要なのは 2 つの仕組みです。1 つ目は gross-up です。建物の空室率が高い場合、固定費を少数の入居者に配分すると、1 テナント当たりの CAM が不当に高くなります。gross-up 条項は、変動費用(光熱費、清掃費、消耗品費など)を、たとえば稼働率 95% 時点で本来発生していた水準に引き直すことで、残存テナントが貸主のリーシングリスクを実質的に補填しないようにします。2 つ目は base year です。これは modified gross lease や full-service lease で用いられ、借主は CAM 全額ではなく、合意した基準年を上回る増加分のみを負担します。その base year が、十分に安定し、かつ gross-up 済みの年度を反映しているかどうかは、契約上きわめて重要です。

確認すべきポイント

最も有効な保護手段は監査権です。貸主の CAM 関連帳簿を年 1 回確認できる明示的な権利、回答期限、さらに監査の結果として一定割合以上の過大計上が判明した場合に監査費用を貸主負担とする条項を確認する必要があります。閾値は 3% から 5% 程度が一般的です。貸主はしばしば、監査期間を短くする、CPA に限定する、成功報酬型の監査人を禁止する、秘密保持義務を課すといった条件を入れますが、その多くは交渉可能です。

expense pool 自体の中身も確認が必要です。設備投資的支出(capital expenditures)は、契約で明示されない限り CAM に含めるべきではありません。仮に含めるとしても、1 年で全額費用化するのではなく、耐用年数にわたり償却配分するのが妥当です。継続的な「consulting」費用や関連会社への管理報酬、マーケティング費用のプール、将来の交換に備えた引当金は、貸主が加えがちな項目であり、借主として精査すべきです。同様に、明示的な除外項目の一覧も確認する必要があります。リーシング手数料、資金調達費用、減価償却費、特定テナント向け工事費は、CAM pool に含めるべきではありません。

controllable CAM への上限設定も重要です。通常、税金、保険料、光熱費を除く controllable CAM について、前年比で年 4% から 5% 程度の上限を設定できれば、今後 5 年程度のコスト予測がしやすくなり、貸主に実質的な白紙委任を与えずに済みます。

APAC における違い

香港では、米国契約でいう CAM は、通常 management fees(借主が管理会社に直接支払う管理費)と rates / government rent(法定負担)に分けて扱われます。オフィス賃貸借では、特に集中冷房を備えた古いグレード A ビルで、management fees とは別に「air-conditioning charges」が設定されることがあります。タワーごとの差が大きいため、個別確認が必要です。

シンガポールのオフィス賃貸借では、相当する費用は通常 service charge と呼ばれ、毎月請求されます。年末には米国型 CAM に近い精算が行われ、これに加えて GST が課されます。

日本では、相当概念は 共益費 です。多くの場合、坪当たりの固定月額として設定され、米国の CAM ほど頻繁に精算されません。従来、貸主は年次変動よりも安定した請求額を好む傾向がありましたが、東京の大型・国際水準ビルでは、米国型の精算方式を採用する例も増えています。

複数の賃貸借契約から CAM、base year、gross-up 条項を契約単位で抽出し、原本ページへの出典付きで整理したい場合は、LeaseTrace で効率化できます。