Rentable vs Usable Square Feet(賃貸面積と実使用面積)
rentable と usable の違いがなぜ重要か、load factor の計算、BOMA/IPMS の計測基準、APAC における実務差を整理します。
最終更新: 2026-05-06
Rentable square feet と usable square feet の違いは、商業賃貸借で最も説明不足になりやすい数値です。借主は rentable square feet に対して賃料を支払い、実際に使用するのは usable square feet です。その差分である load factor(共用部加算率) は、現代的なオフィスビルで 10% から 25% に達することがあり、実際に動く金額へ直接影響します。
2 つの計測値
Usable square feet(USF/実使用面積) は、賃借区画の内側にある、借主が実際に家具を置き、占有し、使用できる面積です。通常は界壁の内法で計測され、専有区画の外側は含みません。
Rentable square feet(RSF/賃貸面積) は、usable square feet に、一定の common area に対する借主の按分持分を加えたものです。典型例は、ロビー、エレベーターホール、共用廊下、中央トイレ、機械室、さらに基準によっては共用アメニティスペースです。計測は定義済みの基準に従って行われ、国際水準ビルで主要なのは、米国の BOMA(Building Owners and Managers Association)、国際基準の IPMS(International Property Measurement Standards)、および各国の同等基準です。
RSF を USF で割った比率が load factor です。「add-on」や「core factor」と呼ばれることもあります。load factor が 15% なら、借主は 1 square foot 使用するごとに 1.15 square feet 分の賃料を支払います。
load factor が変わる理由
理由は 3 つあります。
建物構成。単独テナントフロアでは load factor は低くなります。廊下やフロア内トイレがその借主専用となり、usable area に取り込みやすいためです。マルチテナントフロアでは、廊下、エレベーターホール、共用トイレを複数借主で按分するため load factor は高くなります。中央コア型で機械フロアが大きい旧型ビルは、効率の高い新しい設計よりも高い load factor になりやすいです。
計測基準。BOMA 2017 は、屋上庭園や会議センターなど一部の共用アメニティを tenant 間で按分する common area として扱います。これに対し、旧い契約でも残る BOMA 1996 は common area の定義がより狭いです。多くの国際市場で使われる IPMS 3 も、いくつかの領域で BOMA と扱いが異なります。同じ建物でも BOMA 1996 から BOMA 2017 に切り替えるだけで、物理的変化がなくても rentable area が 3% から 6% 動くことがあります。
交渉。何を common area に含めるかは貸主が定義し、借主が監査します。貸主が通常より広い amenity space を rentable area に載せていれば、load factor は膨らみ、usable square foot 当たりの実質賃料は上がります。
load factor が経済条件をどう変えるか
単純な例です。10,000 USF を借り、load factor が 15% の建物に入る借主は、11,500 RSF に対して賃料を支払います。表面賃料が年間 1 RSF 当たり 100 米ドルなら、年間支払額は 115 万米ドルです。しかし USF ベースで見ると、実際には 1 USF 当たり 115 米ドルを払っていることになります。競合提案を比較する際に見るべきなのは、この実質的な usable square foot 当たり賃料であって、表面上の RSF 単価ではありません。
load factor が大きく異なる 2 つの建物、たとえば 12% と 20% を比べる場合、RSF 当たり賃料だけでは誤認しやすいです。RSF 単価が低い建物の方が、USF ベースでは高いこともあります。
契約で確認すべきこと
契約前にやるべきことは 3 つあります。
建物の計測基準を、年次と版まで含めて書面で取得すること です。「BOMA 2017」なら明確ですが、「industry standard」では不十分です。
USF と RSF の実測値、そのうえで load factor の明示を取得すること です。基本的なことに見えても、貸主が RSF しか提示しないことはあります。
監査権を確保すること です。賃貸借開始後の一定期間内に、借主負担で再計測を委託でき、かつ貸主の数値が重要な程度で過大なら費用償還を受けられるようにするべきです。計測差異 2% から 3% は珍しくありません。それを超えるなら賃料調整の対象になり得ます。
APAC の計測実務
香港 では、gross floor area(GFA)、constructible floor area、saleable area など、規制上の背景を持つ用語が使われます。オフィス賃貸借では歴史的に gross area 表示が一般的で、実効効率の低下が大きく、旧来の Grade-A ストックでは 25% から 35% の load factor も珍しくありませんでした。Central、Causeway Bay、Kowloon East の新しいビルは、より国際基準に近づいています。Lands Department の Code of Measuring Practice が基準線になります。
Singapore のオフィス賃貸借では、通常「lettable area」が使われ、概ね RSF に近い概念です。計測実務も BOMA に近いことが多いです。一方、Urban Redevelopment Authority の gross floor area は規制概念であり、商業条件の数値とは別です。
Japan では、支配的な単位は tsubo(坪) です。1 tsubo は約 3.31 平方メートル、約 35.6 square feet であり、これは rentable と usable の区別とは独立した単位です。東京のオフィス賃貸借は、歴史的にコア効率が低く、米国より高い実効 load factor を持つことがありましたが、丸の内、大手町、六本木の国際水準タワーは、現在では世界標準にかなり近づいています。日本語の実務で「賃貸坪」と「実効的に使える坪」を読み分けることが、米国でいう RSF/USF の確認に相当します。
これが特に重要になる場面
rentable と usable の違いが特に重要なのは 3 つの場面です。
競合する 2 件の賃貸借提案を比較する場合 は、必ず USF ベースの賃料へ正規化すべきです。
市場横断でポートフォリオを集計する場合 は、契約ごとに異なる計測基準をそのまま混ぜず、USF または正規化した IPMS 指標へ変換してから全体指標を計算すべきです。
長期継続中の契約を途中監査する場合 も重要です。大規模改修後に建物を再計測し、契約が「as-measured」面積を参照していると、RSF の変化が賃料へ波及することがあります。
HK、SG、JP、US の契約を横断集計する際、RSF/USF/tsubo の換算差は、比較可能性を崩す見えにくい要因です。LeaseTrace で面積基準を比較する と、計測基準、USF、RSF、load factor を契約ごとに 1 行で見える形に整理できます。