Triple-Net Lease(NNN 賃貸借)

Triple-net lease(NNN)とは何か、3 つの net が何を含むか、gross lease や modified gross lease とどう異なるか、そして APAC でどのような場面に現れるかを整理します。

最終更新: 2026-05-06

Triple-net lease は、一般に NNN と表記される賃貸借形態で、借主がベース賃料に加えて、3 つの「net」、すなわち固定資産税、建物保険、運営費用(通常は CAM として構成)を負担する契約です。貸主はコスト上昇の影響を受けにくいベース賃料を受け取り、物件運営に伴う変動費は借主が吸収します。NNN は米国の単独テナント型リテールや net-lease 投資ポートフォリオで標準的な形態であり、APAC でも一部の物流施設や大口単独テナント案件で用いられます。

「triple net」が実際に含むもの

3 つの net は次のとおりです。

  1. Real estate taxes。固定資産税評価額に基づく税金や特別地区課徴金などを含みます。米国では、借主が按分負担を直接支払うか、貸主に償還します。APAC では、相当するものは貸主側の公租公課負担です。香港の government rent と rates、シンガポールの property tax や stamp duty、日本の固定資産税などが該当します。

  2. Building insurance。通常は建物躯体に対する property and casualty coverage と、共用部について貸主が付保する commercial general liability を指します。これに加え、借主自身も賠償責任保険や動産保険を付保するのが一般的です。

  3. Operating expenses。3 項目の中で最も大きく、複数テナント物件では実質的に CAM と同義で機能します。真の単独テナント型 NNN では、借主が物件運営全体を担い、貸主は実質的に受動的な立場になります。

一方で、標準的に含まれない項目は契約類型によって異なります。資本的修繕や設備更新、たとえば新しい屋根、HVAC チラー、構造修繕などは、NNN であっても貸主負担とされることが少なくありません。これらまで借主に負担させる「absolute net」または「bondable net」lease は、長期の sale-leaseback でより一般的です。

NNN と gross、modified gross の違い

gross lease、または full-service lease では、運営費用はベース賃料に組み込まれ、変動リスクは貸主が負担します。これは複数テナント型オフィスで一般的です。

modified gross lease はその中間に位置し、借主は運営費を含むベース賃料を支払いつつ、base year を超える増加分のみを追加負担します。米国のクラス A オフィスではこれが主流です。

triple-net lease では、運営費はベース賃料から完全に切り離されます。借主はより低いベース賃料を支払う一方で、税金、保険、CAM を別建てで支払います。投資採算を比較する際は、いずれの形態も net effective rent に引き直して比較する必要があります。同じ建物内で 30 ドルの NNN 契約と 45 ドルの gross 契約が提示されても、すべてを合算すると差が数ドルに収まることは珍しくありません。

貸主が NNN を好む理由

NNN は、不動産の運営事業を固定収入に近い投資へ変換します。貸主の収益予見性は高まり、運営リスクは借主が負担します。net-lease REIT が長期 NNN テナントを中心に組成されるのはこのためで、キャッシュフローがクレジット商品に近い性質を持つからです。

借主側から見て NNN を受け入れやすいのは、その借主が建物の実質的な単独利用者である場合です。たとえば、単独テナント型リテール、物流センター、build-to-suit の本社などでは、借主自身が運営判断を行うため整合的です。これに対し、複数テナント型の共有ビルでは、借主は CAM をコントロールできないのに負担だけを求められるため、受け入れにくくなります。

APAC で NNN が見られる場面

香港やシンガポールのオフィスでは、真の NNN はまれで、多くは管理費を別建てにした準 modified gross 型です。NNN がより一般的なのは industrial and logistics 資産で、大型倉庫を単独利用者に賃貸し、借主がサイト運営を担う案件です。

日本でも、単独テナント型リテールや物流案件、特に J-REIT 向けの sale-leaseback で NNN に近い構造が増えています。ただし、契約上で NNN という用語が明示されない場合もあり、税金、保険、共益費をベース賃料から分離して定めることで同等の経済効果を実現します。

APAC における米国型の単独テナントリテール、たとえば銀座や銅鑼湾の旗艦店案件では、貸主が「double net」、すなわち税金と保険のみを借主負担とし、運営費はベース賃料に含める構成を採ることがあります。リテールテナントが全面的な operating pass-through の不確実性を嫌うためです。

NNN lease を読む際の確認項目

デューデリジェンスの観点では、通常の商業賃貸借と共通する項目に加え、次の点の比重が高くなります。

  • operating expenses の定義が広いか狭いか。
  • 資本的支出の扱いが全額転嫁か、償却配分か、除外か。
  • 借主の audit right。これがなければ、借主は実質的に白紙委任で支払うことになります。
  • 税金や保険の手配に関する貸主の substitution rights
  • 税額上昇に関する force majeure carve-out の有無。

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